「人生は一期一会」。年齢や経験を重ねてきた今、この言葉の意味を実感しています。6人兄弟の末っ子として佐久に生まれた私は、田んぼや川での遊び、大好きな野球に明け暮れる少年時代を過ごしました。高校は地元の進学校に合格したものの金銭的な余裕がなかったため、航空自衛隊に入隊。そこで、後に『サラリーマン金太郎』で人気漫画家となる、本宮ひろ志氏と出会うことに。
そして7年間勤務した自衛隊を、自分の可能性を探すために退職して、先に漫画家デビューしていた本宮ひろ志氏のプロダクションに就職しました。しかし実際は仕事もせず、酒を呑み、麻雀を打つ毎日。そんな生活を見かねた集英社の編集者（当時）、西村繁男氏に「原作を書いてみないか」と勧められ、いろはの“い”から教えていただき、『五郎くん登場』（原作：武論尊、漫画：ハセベ陽）で漫画原作者としてデビューを果たしました。その後も『ドーベルマン刑事』（原作：武論尊、漫画：平松伸二）、『北斗の拳』（原作：武論尊、漫画：原哲夫）などのヒット作に恵まれ、漫画の持つ力や漫画をつくる楽しさを知ることができました。
自分の人生やキャリアを振り返ると、大きな節目には素晴らしい人や作品との出会いがありました。こうしたかけがえのない出会いを、次代を担う若い人たちにも経験してほしい。微力ではありますが、漫画の魅力を一人でも多くの方に届けられれば幸いです。